余命1ヶ月、残された日々を、濃く深く生き抜いた主人

自分の死を覚悟した、2度とない残された時間

57年の豊かな人生

入院中、「余命1ヶ月」と宣告され、すぐに家に帰ることにしました。

「大切な家族と一緒に、大好きな家で、最期を迎えよう・・・」

退院してから、主人が生き抜いた、亡くなるまでの19日間・・・。

自分の余命を知って、自分の死を受け入れ、家で過ごした主人の毎日は、本当に濃く深い時間でした。最期まで、主人らしい素晴らしく尊敬のできる亡くなり方でした。

自分が、もうじき死ぬことがわかっていて、体も衰弱していく中で、あんなふうに生きていくことができるのかと思いました。短かったかもしれない57年間の主人の人生でしたが、それは充分豊かな人生だったのではないかと思いました。

家に帰ろう!!

2日後に主人が帰って来る!嬉しくて、張り切る私。

「大好きな家族のいる、大好きな家に帰ろう!!」

家族で余命を知った2日後に、主人は、退院することになりました。入院中は、コロナ禍で面会することもできなかったけれど、退院したら、ずっと一緒にいることができる・・・。私は、その嬉しさのほうが強く、先の心配まで気が回らないほどに、主人が帰って来れるように準備に走り回りました。

家で看ることの大変さも考えることもなく・・・

その時、仕事をしていた私は、いつまでになるかわからない長期のお休みを急遽いただきました。(仕事場には、かなり迷惑をかけてしまったのですが)

時間がない!!!準備をしなければ!!!

まずは、主人の寝る部屋を、主人が快適に過ごせるように模様替えしたり、細々したものを買い揃えたり。これからお世話になる訪問看護の先生へのご挨拶や、これから起こりうる症状悪化のお話や痛みの緩和計画などのお話を聞きに行ったり。そして、手すりなどの介護用品のレンタル手配や介護申請の手続き、レンタルの医療器具の手配など、ハードに走りまわりました。

とにかく、家に戻ってくる主人が、少しでも楽に、快適に気持ちよく過ごせるようにと・・・。

退院して家に戻って来た主人

濃く深い最期の時間

結局、主人は退院後、自宅で19日間過ごし、息を引き取りました。その19日間は、主人にとっても、私たち家族にとっても、今までで一番濃く深い時間となりました。

家に帰ってからも、痛みはひどくなる一方で、痛み止めのお薬の間隔は、日に日に短くなっていきました。

そんな状況の中でも、主人はお世話になった人たちに次々と会いに来てもらい、今までの感謝の気持ちを伝え続けたのです。涙を流すこともなく、笑顔で・・・・。みなさんに、笑顔で、感謝の気持ちを伝えたのです。自分の死を覚悟しての、感謝の気持ちを・・・。

そして、皆さんがお帰りになった途端、ぐったりとなり眉間に皺を寄せて痛みを耐える主人の姿・・・今思い出しても、胸が締め付けられます。自分の体がそんな状態でも、感謝の言葉を笑顔で伝え続けた主人・・・そばで見ていて、すごいと思いました。そういえば、ガンが見つかってから、一度も主人の涙を見たことがありませんでした。そして、弱音も吐いたこともありませんでした。

たぶん、一人で考えて考えて、考えていたと思います

いつも、自分のことよりも、周りの人の気持ちを、先に考える人だったので、私たちの気持ちのことを考えていたのかなと思います。

「自分が落ち込んで、泣いている姿を見せると、家族に心配をさせて不安にさせるから。」と、考えていたのかなと、今になって思います。

すごい人・・・・

そして、痛くてつらい時でも、訪問看護の先生や看護師さんが来て下さると、笑顔で挨拶をして感謝の気持ちを伝えていました。

「私たちには、気を使わなくていいんですよ。無理をしないで。」と、言われていました・・・。本当に、気遣いをしすぎるくらいの人でした。

感謝の最期のあいさつは・・・

娘にも息子にも

娘の旦那さん、息子のお嫁さん

娘の旦那さんのご両親、息子のお嫁さんのご両親・妹さん

主人の2人のお兄さんとお義姉さん

私の両親

職場の方々

近所の人たち・・・・・

本当に、みんなに感謝の気持ちを伝え・・・・

そして、亡くなるまでの最期の一週間は・・・家族だけで過ごしました。

痛み止めの薬が効いている合間、私とふたりだけになった時のことです。目もうつろだった主人が、私の目をジッと真剣に見つめて、言ってくれた言葉があります。(その言葉は、私だけの心に、しまっておきます。それは、私にとって、大切な大切な言葉だから。)

私に伝えておきたかった言葉だったんだね・・・。

あの時、言ってくれたあの言葉が、私の胸の中には、いつもあるから、今、私は幸せに生きて行けるんだよ。ありがとう。

かっこよかった主人の最期

そんな主人の姿は、子供たちの胸にも残るものとなったはずです。

「パパは最後まで立派だった、かっこよかった。」

笑顔と感謝の気持ちを伝えることの大切さを、自分の死をもって教えてくれたように思いました。主人が常に気にかけていた「笑顔と感謝と思いやり」を最後まで貫いた主人・・・後悔のない人生だったかな・・・。

笑顔と感謝と思いやりの人生

57歳でした。もっと生きてほしかったけれど、十分豊かな人生だったと思います。自分の余命を知ってからも、笑顔を忘れず、感謝の気持ちを持ち続け、感謝の気持ちをきちんと伝えることのできた主人は、素晴らしいと思います。人の心に影響を与える死に際を見せてくれたこと・・・素晴らしいと思います。そんな姿に、自分の生き方や、生きて行く意味を考えさせられ、気づかされました。

ありがとうね。

私も、残された限りのある人生・・・主人の立派な精神に少しでも追いつくようにしようと思っています!!!

だから、これからも一緒にいてね!!私と一緒にいてね!!!

~あなたへ~

もしも、大切な人が亡くなったことで、あなたに後悔があるとしたら・・・

これからのあなたが、ご自分の人生を後悔しないものにすれば、大切な人の死も後悔のないことに思えるはず。

大切な人の死があったから、あなたは成長できるのだから。たぶん、大切な人も、それが一番嬉しいはずです。

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